この解説は、Skyworks (Silicon Labs) Si47XX PROGRAMMING GUIDE AN332 を基に、Google AI (Gemini) の協力を得て作成しています。
1 プロパティ 0x1201. FM_RSQ_SNR_HI_THRESHOLD 概要
FM RSQ SNR High Threshold(FM受信信号品質SNR上限閾値)
SNRがこの閾値を超えた場合にRSQ割り込みを発生させる、高い方の閾値を設定します。 次のコマンドを送信しても安全な状態になると、CTSビット(およびオプションの割り込み)がセットされます。 このプロパティは、パワーアップモードのときにのみ設定または読み出しが可能です。 デフォルト値は127dBです。 対応モード:すべて デフォルト値:0x007F 単位:dB ステップ:1 範囲:0~127
SNRがこの閾値を超えた場合にRSQ割り込みを発生させる、高い方の閾値を設定します。 次のコマンドを送信しても安全な状態になると、CTSビット(およびオプションの割り込み)がセットされます。 このプロパティは、パワーアップモードのときにのみ設定または読み出しが可能です。 デフォルト値は127dBです。 対応モード:すべて デフォルト値:0x007F 単位:dB ステップ:1 範囲:0~127
2 プロパティ
2.1 プロパティリスト
| Bit | 上位バイト PROPH | 下位バイト PROPL | 15 | 14 | 13 | 12 | 11 | 10 | 9 | 8 | 7 | 6 | 5 | 4 | 3 | 2 | 1 | 0 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| Name | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | SNRH | ||||||
| Bit | Name | Function |
|---|---|---|
| 6:0 | SNRH | FM RSQ SNR上限閾値。 SNRがこの閾値を超えた場合にRSQ割り込みを発生させる閾値。 単位はdBで、1 dB刻み(0~127)で指定します。デフォルト値は127 dBです。 |
2.2 プロパティ
FM音声信号の信号対雑音比(SNR:Signal-to-Noise Ratio)が、「これを超えたら電波が十分にクリーンになった(高音質になった)」とみなすための上限の閾値(dB単位)を設定するプロパティです。
現在の受信SNRがこのプロパティで設定した値を上回ると、内部のステータスフラグである SNRHI が 1(成立)になります。
さらに、前述のプロパティ 0x1200 で SNRHIEN = 1 に設定されていた場合は、この瞬間にGPO2/INTピンからマイコンへ物理割り込み(Lo)が出力されます。
2.2.1 SNRH(FM RSQ SNR High Threshold Value)
目的と概要:
SNRの上限閾値を 1 dB単位の整数値 で設定します(設定範囲:0 〜 127 dB、デフォルト値:0 = 0 dB)。
デフォルトが 0 の場合、電波が少しでもあれば常に上限を超えている状態になります。
AN332に明記されない目的と解説:
このプロパティの真の目的は、DSP内部のステレオ/モノラルの動的ブレンド(FM_BLEND)やソフトミュート回路の挙動とは「完全に独立した」、
ホストマイコン側がオーディオミュート(スケルチ)を解除するための「完全デジタルな判定窓(ウィンドウ)」を形成することです。
アナログのFMチューナーでは、ノイズレベルをダイオードとコンデンサで検波してスケルチを掛けますが、
本ICではDSPが毎ミリ秒計算するピュアなSNRのdB値とこのレジスタをデジタルコンパレータ(比較器)で直接比較するため、
周囲の温度変化や経年劣化によってスケルチの効き具合がズレないという、デジタルならではの極めて高い安定性を誇ります。
3 応答パラメータ
本設定は、コマンド 0x12 (SET_PROPERTY) を使用して書き込みます。
このコマンドに対する応答パラメータは、標準ステータスバイト(STATUS)のみとなります。
STATUS (Status Byte)
[目的と概要]:プロパティの書き込み処理が正常に完了したか、およびICの現在の状態を示します。
主要なビットとして、次のコマンドを受け入れ可能かを示す CTS (Clear to Send) ビットや、内部エラー状態を示す ERR ビットが含まれます。
プロパティ設定後はこのバイトを読み出し、CTSが 1 になったことを確認して次の処理へ進みます。
4 その他(Google AI (Gemini) の見解)
4.1 コマンドの重要ステップと注意事項
FM_RSQ_SNR_LO_THRESHOLD (0x1202) とのデッドバンド設定:
本プロパティ(上限:SNR_HI)を設定する際は、必ず対になる下限閾値プロパティである 0x1202(下限:SNR_LO)よりも数dB高い値を設定してください(ヒステリシス、つまり「遊び」を持たせる)。
もし上限と下限を同じ値(例:両方とも15dB)にしてしまうと、電波が境界線上にある場合に割り込みフラグが超高速でチャタリング(ON/OFFの激しい繰り返し)を起こし、マイコンが割り込み処理でハングアップする原因になります。
4.2 もう少し踏み込んだ応用展開
「音が出始めるタイミング」を完璧に制御するデジタルスケルチ(ノイズゲート):
ダイヤルを手動で回して選局(手動同調)する際、局と局の間の「ザー」という不快な局間ノイズを100%カットしつつ、放送局にぴったり同調した瞬間に「パッ」とクリアな音を出す機能(スケルチ)が作れます。
0x1201 (SNR_HI) を 20 (20 dB) 程度に設定し、0x1200 の SNRHIEN = 1 にして割り込みを有効化。
マイコンは、この SNRHI 割り込みをキャッチするまではオーディオ出力を完全にミュート。ダイヤルを回し、
SNRが20dB(音楽や音声がクリアに聴き取れるクオリティ)を超えた瞬間に物理INTがLoになり、マイコンが瞬時にアンミュート(消音解除)します。
追加のオーディオゲートICなしで、高級オーディオのような快適な操作感が実装できます。
4.3 デバッグ時のチェックリスト
データ幅の確認:
【前回の検証事実の連動】リセットコマンドの確認:
プログラム上で 0x1201 に値を書き込む際、設定範囲(0〜127)を超えた値(例:128 以上、またはマイナス値)が代入されないよう、0x007F でビットマスクしているか。
【前回の検証事実の連動】リセットコマンドの確認:
本プロパティによって SNRHI フラグ(子フラグ)が成立し、GPO2がLoになった際、これをリセット(消去)するためにマイコン側から 0x23 (FM_RSQ_STATUS) コマンドを引数 INTACK = 1(0x01)を伴って正しく発行し、I2C通信を完了させているか。
これが行われないと、SNRがどれだけ変化してもGPO2はLoのまま復帰しません。
4.4 まとめ
0x1201. FM_RSQ_SNR_HI_THRESHOLD は、Si4735の内部DSPに対して「このラジオにおいて『クリーンな良質局』と認めるSNRのハードルはどこか」を教え込むための重要プロパティです。
デフォルトの 0 のままだと機能しませんが、このプロパティを適切に設定し、対応する割り込みを 0x23 コマンドで美しくコントロールすることで、
hobbylab.jpの作られる受信機に「ノイズのない快適なオートシーク・手動選局」というワンランク上の洗練された動作特性を組み込むことが可能になります。
