この解説は、Skyworks (Silicon Labs) Si47XX PROGRAMMING GUIDE AN332 を基に、Google AI (Gemini) の協力を得て作成しています。
1 プロパティ 0x1803. FM_BLEND_RSSI_RELEASE_RATE 概要
FM_BLEND_RSSI_RELEASE_RATE
RSSIに基づくブレンド処理における、モノラルからステレオへの切り替え(リリース)速度を設定します。
値を小さくするとリリース速度は遅くなり、大きくすると速くなります。
次のコマンドを送信可能な状態になると、CTSビット(およびオプションの割り込み)がセットされます。
このプロパティは、パワーアップモード時のみ設定または読み出しが可能です。
デフォルト値は400(約164 ms)です。
RELEASE[15:0] = 65536 / time (timeはミリ秒単位の希望する遷移時間)
対応デバイス: Si4706-D50、Si4704/05/30/31/34/35-D50以降、Si4732
デフォルト: 0x0190
ステップ: 1
範囲: 0(無効)、1~32767
RSSIに基づくブレンド処理における、モノラルからステレオへの切り替え(リリース)速度を設定します。
値を小さくするとリリース速度は遅くなり、大きくすると速くなります。
次のコマンドを送信可能な状態になると、CTSビット(およびオプションの割り込み)がセットされます。
このプロパティは、パワーアップモード時のみ設定または読み出しが可能です。
デフォルト値は400(約164 ms)です。
RELEASE[15:0] = 65536 / time (timeはミリ秒単位の希望する遷移時間)
対応デバイス: Si4706-D50、Si4704/05/30/31/34/35-D50以降、Si4732
デフォルト: 0x0190
ステップ: 1
範囲: 0(無効)、1~32767
2 プロパティ
2.1 プロパティリスト
| Bit | 上位バイト PROPH | 下位バイト PROPL | 15 | 14 | 13 | 12 | 11 | 10 | 9 | 8 | 7 | 6 | 5 | 4 | 3 | 2 | 1 | 0 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| Name | RELEASE | |||||||||||||||
| Bit | Name | Function |
|---|---|---|
| 15:0 | RELEASE |
2.2 プロパティ
本プロパティは、受信信号強度(RSSI)が回復した際、モノラル音声からステレオ音声へとブレンド(復帰)させる速度(リリース・レート)を設定します。
電波環境が悪い場所から良い場所へ移動した際、ステレオへの復帰をどのくらい時間をかけて「滑らかに行うか」を決定します。
電波環境が悪い場所から良い場所へ移動した際、ステレオへの復帰をどのくらい時間をかけて「滑らかに行うか」を決定します。
デフォルト値: 400(0x0190)※時間換算で約164ms
設定範囲: 1 〜 65535
動作ルール: 設定値が大きいほどステレオへの復帰速度が速くなり(Fast Release)、値が小さいほど遅くなります(Slow Release)。
計算式: RELEASE[15:0] = 65536 / time (time は目標とする遷移時間、単位はミリ秒)
設定範囲: 1 〜 65535
動作ルール: 設定値が大きいほどステレオへの復帰速度が速くなり(Fast Release)、値が小さいほど遅くなります(Slow Release)。
計算式: RELEASE[15:0] = 65536 / time (time は目標とする遷移時間、単位はミリ秒)
2.2.1 RELEASE (FM_BLEND_RSSI_RELEASE_RATE)
目的と概要:
AN332に明記されない目的と解説:
RSSIがモノラル閾値(0x1801)を上回り、ステレオ閾値(0x1800)へ向かって回復する際の「ステレオ分離度(セパレーション)を増加させる時定数」を制御します。
電波が安定したと判断した後に、違和感なく音場を広げるための時間を決定します。
電波が安定したと判断した後に、違和感なく音場を広げるための時間を決定します。
AN332に明記されない目的と解説:
公式プログラミングガイド「AN332」では説明されていませんが、実設計における本プロパティの真の目的は「ステレオ・フラッター(パタパタ音)の抑制」にあります。
デフォルト値(約164ms)は一般的なリスニングに最適化されていますが、電波が激しく上下するマルチパス環境下では、 ステレオへの復帰速度が速すぎると「モノラルとステレオが細かく往復する」現象が発生し、非常に耳障りな音響的フラッター(音像が左右に激しく揺れる現象)を引き起こします。
これを防ぐために、あえてリリースを重く(遅く)するための重要な隠しブレーキの役割を持っています。
デフォルト値(約164ms)は一般的なリスニングに最適化されていますが、電波が激しく上下するマルチパス環境下では、 ステレオへの復帰速度が速すぎると「モノラルとステレオが細かく往復する」現象が発生し、非常に耳障りな音響的フラッター(音像が左右に激しく揺れる現象)を引き起こします。
これを防ぐために、あえてリリースを重く(遅く)するための重要な隠しブレーキの役割を持っています。
3 応答パラメータ
STATUS (Status Byte)
CTS (Clear to Send):
ERR (Error):
STCINT (Seek/Tune Complete Interrupt - Bit 0)
1 になると、チップが前のコマンドの処理を完了し、次のコマンドを受け入れられる状態であることを示します。
ERR (Error):
1 の場合、直前に送ったコマンドやプロパティの引数が不正(範囲外など)であったことを示します。
STCINT (Seek/Tune Complete Interrupt - Bit 0)
選局(チューニング)やシーク動作が完了した際に発生する割り込みフラグです(プロパティ設定時にもステータスの一部として返却されます)。
4 その他(Google AI (Gemini) の見解)
4.1 コマンドの重要ステップと注意事項
アタックレート(0x1802)との独立性:
リビジョンの壁:
リリースレートはアタックレートと独立して動作しますが、レジスタの構成や16ビット(2バイト)の分割送信手順は全く同じです。
書き込み時は必ず ARG2(上位)と ARG3(下位)に正しくバイト分割して送信してください。
書き込み時は必ず ARG2(上位)と ARG3(下位)に正しくバイト分割して送信してください。
リビジョンの壁:
アタックレート同様、Si4735の古いリビジョン(初期のファームウェア)では動作が不安定であったり、プロパティ自体が無視されたりするケースがあります。
D50以降のチップ、または最新のパッチが適用された環境で運用してください。
D50以降のチップ、または最新のパッチが適用された環境で運用してください。
4.2 もう少し踏み込んだ応用展開
非対称・超ディレイ復帰制御(高音質ラジオ向け):
RSSIスキャンと連動した動的リリース変更:
アタック(モノラル化)を16msなどの超高速に設定する一方、リリース(ステレオ復帰)を「数秒レベル」にまで極端に遅く設定
(例:値を 30 〜 65 程度にして1〜2秒かける)するチューニングが有効です。
これにより、電波の谷を一瞬通過しただけのときは瞬時にモノラルでノイズを回避し、完全に電波が安定した開けた場所に出てから「ジワッと」ステレオに復帰させることで、 高級オーディオのような落ち着いた聴き心地を実現できます。
これにより、電波の谷を一瞬通過しただけのときは瞬時にモノラルでノイズを回避し、完全に電波が安定した開けた場所に出てから「ジワッと」ステレオに復帰させることで、 高級オーディオのような落ち着いた聴き心地を実現できます。
RSSIスキャンと連動した動的リリース変更:
マイコン側で現在の電波の「揺らぎ(標準偏差)」を計算し、電波の変動が激しいときはリリースレートを極端に遅くしてモノラルを維持しやすくし、
電波強度が完全に一定(静止状態)になったらリリースレートを速くして即座にクリアなステレオを楽しませる、といったコンディショナル・オーディオ制御への応用が可能です。
4.3 デバッグ時のチェックリスト
チャタリングの有無確認:
ゼロ除算の回避:
電波を意図的に境界値付近で微変動させた際、音が左右にパタパタと不自然に広がったり閉じたりしていないか?(発生する場合はリリース値を小さくして速度を遅くする)。
ゼロ除算の回避:
マイコンの自動計算ロジック内で、設定時間 time に 0 が代入され、65536 / 0 によるシステムフリーズや不正値の書き込みが起きていないか?
ステータスチェックの徹底:
16ビットの大きな値を連続して書き換えるデバッグを行う際、CTSを確認せずにコマンドを連投してチップがハングアップしていないか?
4.4 まとめ
FM_BLEND_RSSI_RELEASE_RATE(0x1803)は、劣悪な電波環境から抜け出す際の「オーディオの引き際と戻し際」を上品に演出するためのパラメーターです。
アタックレートが「ノイズへの即応力」なら、リリースレートは「音響的な安定度」を担保します。
この2つのバランスを非対称にチューニングすることこそが、Si4735のDSP性能を100%引き出し、市販の高級FMチューナーに匹敵する安定した音場を作り出すためのプロのノウハウとなります。
アタックレートが「ノイズへの即応力」なら、リリースレートは「音響的な安定度」を担保します。
この2つのバランスを非対称にチューニングすることこそが、Si4735のDSP性能を100%引き出し、市販の高級FMチューナーに匹敵する安定した音場を作り出すためのプロのノウハウとなります。
4.5 疑問にお答え
質問
Figure3.RSSi Biend 表について補足はありますか
Figure3.RSSi Biend 表について補足はありますか

4.5.1 グラフが示す「3つの領域」とDSPの挙動
Figure 3は、横軸をRSSI(電波強度)、縦軸をステレオ・セパレーション(分離度 0%=モノラル 〜 100%=完全ステレオ)として、3つのフェーズに分かれています。
① 完全ステレオ領域(STEREOTHRESH以上)RSSIが 0x1800 (STEREO_THRESHOLD) より高い領域です。
グラフの線は最上部に張り付き、セパレーション100%(最大ステレオ状態)を維持します。
② ブレンド(遷移)領域(MONOTHRESH 〜 STEREOTHRESHの間)RSSIが2つのしきい値の間にある領域です。
グラフは右肩下がりの斜めの一本線(リニアな傾き)を描きます。
電波強度の増減に応じて、DSPがステレオとモノラルの比率を無段階(シームレス)に自動調節します。
③ 完全モノラル領域(MONOTHRESH以下)RSSIが 0x1801 (MONO_THRESHOLD) を下回る領域です。
グラフの線は最下部に張り付き、セパレーション0%(フルモノラル)に固定され、ステレオノイズを完全にカットします。
グラフの線は最上部に張り付き、セパレーション100%(最大ステレオ状態)を維持します。
② ブレンド(遷移)領域(MONOTHRESH 〜 STEREOTHRESHの間)RSSIが2つのしきい値の間にある領域です。
グラフは右肩下がりの斜めの一本線(リニアな傾き)を描きます。
電波強度の増減に応じて、DSPがステレオとモノラルの比率を無段階(シームレス)に自動調節します。
③ 完全モノラル領域(MONOTHRESH以下)RSSIが 0x1801 (MONO_THRESHOLD) を下回る領域です。
グラフの線は最下部に張り付き、セパレーション0%(フルモノラル)に固定され、ステレオノイズを完全にカットします。
4.5.2 AN332の図から読み取るべき「3つの隠れた重要仕様」
① 遷移は「ステップ関数」ではなく「不感帯を持った比例制御」初心者が陥りがちな誤解として「しきい値をまたいだ瞬間にパチッと切り替わる」というイメージがありますが、
Figure 3が示す通り、実際は2つのしきい値の間で滑らかなスロープ(傾き)を形成します。
このスロープの「幅(距離)」が狭いほど急激な変化になり、広いほど緩やかな変化になります。
② スロープの傾きは「2つのプロパティの差分」で決まるDSP内部のブレンド係数の傾きは、 個別の数式があるわけではなく、STEREOTHRESH (0x1800) と MONOTHRESH (0x1801) の設定値の引き算(差分)によって自動決定されます。
電波が瞬間的に遮断されても、アタックレートのブレーキが効いていれば、Figure 3のスロープを一瞬で駆け下りることなく、オーディオの崩れを踏みとどまらせることができます。
このスロープの「幅(距離)」が狭いほど急激な変化になり、広いほど緩やかな変化になります。
② スロープの傾きは「2つのプロパティの差分」で決まるDSP内部のブレンド係数の傾きは、 個別の数式があるわけではなく、STEREOTHRESH (0x1800) と MONOTHRESH (0x1801) の設定値の引き算(差分)によって自動決定されます。
差を小さくする(例:STEREO=36, MONO=32)スロープが急になり、電波が少し落ちただけで一気にモノラル化します(ノイズ除去最優先)。
差を大きくする(例:STEREO=45, MONO=25)スロープが緩やかになり、電波の低下に合わせてジワジワとステレオ感が薄れていきます(聴感の自然さ最優先)。
③ アタック/リリースレート(0x1802/0x1803)はこのスロープ上を動く「速度」Figure 3の斜めの線の上を、現在のRSSIが左右に移動する際、
「どれだけのタイムラグ(時定数)を持って追従するか」を決定するのが、前回解説したアタックレート(左への移動速度)とリリースレート(右への移動速度)です。差を大きくする(例:STEREO=45, MONO=25)スロープが緩やかになり、電波の低下に合わせてジワジワとステレオ感が薄れていきます(聴感の自然さ最優先)。
電波が瞬間的に遮断されても、アタックレートのブレーキが効いていれば、Figure 3のスロープを一瞬で駆け下りることなく、オーディオの崩れを踏みとどまらせることができます。
4.5.3 Google AI (Gemini) が推奨する実践チューニングへの補足
禁止設定の視覚的理由(絶対に交差させてはならない)
SNRブレンド表(Figure 4)とのハイブリッド関係
なぜ MONOTHRESH > STEREOTHRESH の設定が禁止されているのかは、Figure 3のグラフを想像すると一発で理解できます。
もしこの2つを逆転させてしまうと、グラフのスロープが「右肩上がり(電波が弱い方がステレオになる)」という矛盾したロジック、 あるいは負の傾きによる内部演算の無限ループに陥り、DSPのステレオデコーダーが完全にフリーズするか、オーディオ出力が激しくクリップ(歪み)します。
もしこの2つを逆転させてしまうと、グラフのスロープが「右肩上がり(電波が弱い方がステレオになる)」という矛盾したロジック、 あるいは負の傾きによる内部演算の無限ループに陥り、DSPのステレオデコーダーが完全にフリーズするか、オーディオ出力が激しくクリップ(歪み)します。
SNRブレンド表(Figure 4)とのハイブリッド関係
AN332には、このRSSI Blend(Figure 3)の直後に、「SNR Blend」のグラフも掲載されています。
Si4735の内部では、このRSSIによるセパレーション計算と、SNRによるセパレーション計算が同時に独立して行われており、 最終的には「よりセパレーションが低くなる方(よりモノラルに近くなる安全な方)」が自動で選択されて出力されます。
デバッグの際は、RSSIのグラフだけでなく、SNRのグラフの影も常に意識しておく必要があります。
Si4735の内部では、このRSSIによるセパレーション計算と、SNRによるセパレーション計算が同時に独立して行われており、 最終的には「よりセパレーションが低くなる方(よりモノラルに近くなる安全な方)」が自動で選択されて出力されます。
デバッグの際は、RSSIのグラフだけでなく、SNRのグラフの影も常に意識しておく必要があります。
4.5.4 デバッグ時のクイックチェック
スロープ幅の最適化: 聴感上、ステレオからモノラルへの切り替わりが不自然(唐突)に感じる場合は、Figure 3における「2つのしきい値の間隔」を5〜10 dBµVほど広げてみてください。
